
2017年10月2日「COMSA」の「CMS」というトークンのICOが開始されました。
日本初となるトークンセールは大変話題を呼びましたが「ICO」や「トークン」について「よくわからない」という声がありましたので、わかりやすく解説したいと思います。
ICOとは
ICOとは「Initial Coin Offering」の略で暗号通貨の発行によるクラウドファンディング(資金調達)のことです。
新規公開株になぞらえてこのような名称が定着したようです。
ICOの手順を3つにまとめると、以下の通りです
【1】購入の判断材料となるホワイトペーパーを作成し開示する
ホワイトペーパーとは目論見書のようなもので、プロジェクトの概要やトークンの用途・売り出し方法、開発スケジュール、開発陣など詳細を記載するのが一般的です。
購入するかどうかは、このホワイトペーパーの内容で正当性や価値を判断します。
【2】売り手側は、トークンを発行する
イーサリアムやNEMなどのブロックチェーン上で、トークンを発行します。
【3】ビットコインなどの仮想通貨でトークンを販売し資金調達が行われる。
資金調達を行う上で、ビットコインやNEMなどの仮想通貨に限定される理由は、法定通貨を対価としてトークンを発行すると、マネーロンダリングの危険性を指摘される恐れがあるからです。
そうなると、無登録販売として違法性を疑われることになりかねません。
その対策としてCOMSAでは「仮想通貨と交換はできても、法定通貨とは交換できない財産的価値のあるもの」としています。
これにより、発行側が仮想通貨交換業の登録をせずともトークンの発行が可能となるのです。
ICOの簡単な流れは以上になりますが、株式投資のように考えられている方も多くいるようです。
ICOに参加するには、トークンについての正しい知識が必要です。
メリットデメリットを解説するまえに「トークンとは何か」そして「トークンの価値・価格」について解説します。
トークンとは
トークンとはイーサリアムやNEMなどのスマートコントラクトを活用した、ブロックチェーン上で発行されるデジタルデータです。
例えば、ナナコポイントをイメージしてください。ナナコポイントは、セブンイレブンが発行し「誰がどれだけのポイントを持っているのか」をセブンイレブンが管理しています。
トークンが企業の発行するポイントと違うところは、その量、つまり「誰がどれだけ持っているか」はブロックチェーンにより存在が証明されているということです。
トークン自体は、それ以上でもそれ以下でもありません。どんな用途で使用されるかにより、付加価値がつくものです。
トークンの価値・価格
COMSAは、今後のICOをで販売するトークンを特別価格で購入するための通貨(CMS)を前売り(1CMS=1ドル分の仮想通貨)で販売しているのです。
わかりやすく、LIVEのチケットに例えてみましょう。
LIVEチケットをトークン化し8000円で販売したとします。
さて、このチケットを「メルカリ」や「ヤフオク」でオークションにかけたら、いくらの価値になるでしょうか?
「誰の?」と思った方は大正解です。
そうです、それがトークンの価値です。
そしてトークンが取引所に上場するというのはオークションと類似なのです。
名の知れない芸人のお笑いライブだったらいくらで買いますか?
もし、ジャニーズの「嵐」や「EXILE♡」のチケットだったらいくらの値が付くでしょうか。
これが価格です。
これと同じように「CMS」は今後「COMSA」でICOされるトークンがどれだけ需要があるものなのかによって、市場で価格が決まります。
ここで「ナナコポイント」に話を戻します。
ナナコポイントは商品を買う時に「1P=1円、で支払いに充当できる」と、セブンイレブンが定義しているので、1円の価値があります。
CMSがナナコポイントと違うところは、CMSには発行数に上限があるうえ「1CMS=〇円」と価格が決まっていません。
発行数に上限があるという事は、特別価格で買える人数に上限があるという事ですから、人気が出れば価格が上がるのは必然です。
断言はできませんが、ICOに参加したいと思う人が少なければCMSは値下がりするでしょうし、人気のあるICOが続けば値上がりするでしょう。
これを見てわかるように「トークンだから価値が付かない」「プラットフォーム以上の価値にはならない」なんて話も耳にしますが、これも大きな誤解です。
トークンは活用されるプロダクト、つまりどんな商品やサービスを展開するかによってそれの価値が決まるので、プラットフォーム(親)を超える価格になる可能性は否定できません。
トークンの用途は、チケットやポイント以外にも、CMSやゲームの通貨のような決済手段に利用されるものもあれば、割引券や回数券、Webサービスの認証、ゴルフの会員権にだって使用できます。
トークンは価格が変動するものもあれば、価格が固定されるもの、例えるなら「アミューズメントパークの年間パス」かも知れません。
どのようなプロダクトを作るかは全て発行側次第ということです。
では、本題に戻りまして、トークン発行側、買い手側のメリット・デメリットについて解説したいと思います。
ICOのメリット・デメリット
買い手側のメリット
- 開発されるサービス・商品や特典などが渡される。
これがトークンの本質です。
投資と考えるよりも、まず、自分がそのトークンを使いたいと思うかを購入基準にするべきです。
- 優遇を受けられる
サービスと価値が「将来交換できる」というだけでは、サービス開始後に買えばよいわけですから、資金調達は難しいでしょう。サービス開始前に売り出すということは、その時に買うメリットが用意されていることが多いと思います。
- 小額から参加できる
10万、20万という大金ではなくても100円、1000円と小さな額から参加する事もできます。
- 投資回収の機会が増える
取引所に上場されれば、その価値を手軽に第三者へ売買する事が可能です。
- キャピタルゲインを得られる可能性
取引所に上場すれば、他の仮想通貨と交換ができますので、トークンの価格があがれば売買差益が得られます。
買い手側のデメリット
- 事業の撤退や企業の破綻
ホワイトペーパー通りに事業が進められる保証はありません。
もしかしたらその事業が頓挫してしまう可能性もあります。
- 換金手段が限られる
登録仮想通貨交換所への取扱いが認められないと、第三者に売買するのはとても困難です。
COMSAの場合は「Zaif」へ上場する事が決定していますが、通常のICOの場合は、上場が確定しているトークンは多くありません。
- 価格が上がらない
登録交換所で取り扱われても、普及しないと価格がは上がりません。
例えば、特典を受けられる時間や場所等が限定されるようなトークンだった場合など、用途によっては普及が難しい場合があります。
発行側のメリット
- 大企業で無くても発行できる
ベンチャー企業、個人、プロジェクト単位でもICOが可能です。
これは、ベンチャー企業の成長促進、支援するために最も有効な方法であるといえます。
- 素早く、安く、簡単に資金調達ができる
証券会社など監査機関を通さなくても、世界中から資金調達ができます。
ICOには、良くも悪くも監査期間がありませんので、スピーディに低価格で資金調達が可能なのです。
- 需要が定量的に想定できる
莫大な広告費をかけなくても、ICO自体が宣伝効果となります。
ICOは、プロダクトへの価値交換ができるトークンを販売するわけですから、資金調達額がそのまま「消費者にどれだけの需要があるか」の指標となります。
- 株式を発行する必要がない
エクイティファイナンス(増資)のように株を発行するわけではないので、会社の所有権は既存株主のままです。
そのため、金融機関やVCからの圧力も無く、自由に事業を展開することができます。
また、デットファイナンス(負債)とも異なり返済する必要もありません。
発行側のデメリット
これは朝山さんの言葉を引用させていただきます。
「売ることを前提にトークンを発行して、実際に売り出すと、IPOよりずっと早くお金を得ることになるかもしれませんが、当然その反動でレピュテーション(評判)が落ち、企業にとって余計にマイナスになるだけです。」
まさに、これに尽きます。
発行側に義務こそ無いものの、サービスを開始する前からサービスの対価を払ってもらっているわけですから、消費者の期待に添うサービスを展開することが求められます。
もし、ホワイトペーパーに書かれた「約束事」を破ったのであれば、企業の信頼は失墜し、それは既存事業にも影響が及ぶこととなるでしょう。
まとめ
売買差益を得られるかどうかは、「希少性」や「サービスや商品の質」に大きく影響します。
もし、発行側から「価格が上がる」という発言があった場合は要注意です。その価格は発行側ではなく、消費者が決めるものだからです。
ブロックチェーンで注目されているのが「スマートコントラクト」であるように、トークンはそのスマートコントラクトを活用したサービスの展開と言う位置づけです。
イーサリアムは数々のトークンを生み出し、普及させた事によって価値が上がったように、トークンはそのプロダクト(サービスや商品)が普及するかが大きな価値の判断材料となります。
もしICOの参加を検討しているのであれば、ホワイトペーパーを細部まで読み「プロダクトを支援したい」と思ったら購入するようにしましょう。
トークンではなく、主要通貨に投資を考えている方は合わせてこちらもご覧ください。